途中経過 3

2001年11月29日
文学部を卒業したというより、馬術部を卒業したという感じだったな。4年間は馬術部一色の生活だった。
朝4時半に起きる。始発の電車に乗って、朝練にでる。授業があれば、授業にいく。(ほとんど寝ていたなあ。)終ればまた馬場へ行って馬の世話をする。下級生のうちは馬に乗れるのなんて週に一回がいいとこ。あとは馬小屋の掃除とその他の作業。運動部だから、上下関係が厳しい。先輩が言えば、白い物も黒い。週末はない。夏休みもない。ちょっと根性が必要だった。
上手くなる、という私の目的は達成されなかった。プロではない上級生やOBに教えてもらうので、それも仕様がなかった。あまりスポーツには力を入れていない学校だった。私はただ、手綱を引っ張ったり馬を蹴飛ばしたりして、力づくで馬に乗ることを覚えた。それも仕方なかった。馬は色々な(上手くない)人間に乗られて、どのような指示にどう反応していいのかかなり混乱していたし、私もただその場しのぎの技だけ教えられ、基本のフォームなどはどんどん崩れていった。それでも試合に出ればまあまあの成績で、私はいっぱしに馬に乗れるつもりでいた。
後に私は海の向こうで馬に乗ることになるが、そこで「初心者よりひどい」と言われるとは、その時には思っていなかった。

途中経過 2

2001年11月28日
高校生になって、おじいさん先生が引退し、もう少し若い人に習うようになった。その頃には私も調馬索(紐)をつけなくても一人で馬をコントロールして乗れるくらいになっていた。新しい先生は競技でも上位にいく有名な人で、とても尊敬していたし、日本で一番上手いだろうぐらいに思っていた。後に私は意見を変えることになるのだが。
まあとにかく、その人が当時、美しい牝馬(雌の馬)に乗って競技に出ていて、成績も良かった。雲の上を歩くような、美しい動きをする馬だった。生まれついてのダンサーだ。乗せてくれと頼んだが、断られた。すごく良い馬で、私はそれに見合うほど上手くないから、というのだ。上手くなりたいと思った。でもどうすればいいのか???先生は大学の馬術部の出身だった。日本には競馬以外の馬乗りを専門的に教育するシステムがなく、当時の有名な競技選手はみな大学の馬術部の出身だった。よし、馬術部に行こう。と短絡的に決定した。
大学時代のことは、今まであまり思い返すこともなく、まあ努めて触れないようにしてきた。でもここらで記憶を整理しよう。もう充分年をとったし、あの4年間が時間の浪費であったとは、かたずけないために。

途中経過 1

2001年11月27日
本題の馬学に入る前に、私の馬人生を順を追ってたどっていきたいので、物語がドラマティックな展開を迎えるまで、もう少しご辛抱頂きたい。
私が馬に乗り始めたのは、中学1年の時だった。そのきっかけというのは、父だったのだろうな。父は幼い頃から足が悪い。乗馬は父ができる限られたスポーツの一つだった。父が馬に乗っているのを見たことはない。学生の頃少しやった程度らしい。子供にもやらせたかったのだろう。(私は五体満足だが。)4人の子供のなかで、興味を示したのは私一人だった。
私の最初の先生は、80歳すぎたおじいさんだった。(去年99歳で亡くなった。)私が週末乗りに行くと、馬を調馬索にかけた。(馬のハミに紐をつける。人間は立って、手に追い鞭を持つ。馬はその周りを直径20mくらいの円を描いてまわる。後に触れるが、はっきり言って乗るより難しい。)先生は、何を教えてくれるでもなかった。1時間ほど、調馬索をつけた馬に私を乗せた。お尻は痛いは内股は痛いは、楽しいどころではなかった。そんなことを2年ほど続けた。
乗馬クラブなんてところは、大人の人ばかりで、私は何を話していいかも分からず、楽しいどころではなかった。

馬と出あった日

2001年11月26日
子供のころは、動物とは縁遠い生活だったなあ。マンション暮らしだったし。犬とか怖かったし。幼いころ父に連れられて、馬を見に行った。今でも覚えている。真っ白い馬に人参をあげようとした。手ごと食べられそうになって、人参を落とした。こわくて、美しい生き物だと思った。そのすぐあと、小学校の図工の時間に、その馬をかたどった人形か何か作って、その馬の名前をつけた。(シルバーだったかな???)その頃から私は馬に魅了されていた・・・、かどうかは分からない。
とにかく、私は生まれたときから動物に対する感覚(動物とコミュニケーションをとる感覚)が優れていた人間ではない。馬に乗る才能があったわけでもない。両方とも、生まれたときからある人もいるんだけどね。いい先生たちにめぐり合い、自分でもかなり努力して、やっと人並みになったのだなあ。それについては、感謝を述べたい人々が山ほどいる。馬もね。半分以上のことは馬から教わったからさ。

馬場馬術とはだな

2001年11月24日
馬に乗るというのは、スポーツの一種である。障害物を飛び越えたり、野山を駆け回ったり、色々な種目があるんだけど、私が主に学んだのは馬場場馬術というジャンルである。日本ではすごくマイナーだよな。オリンピックでもやるんだけど。
馬場馬術とはなんであるか。競馬をスピードスケートに例えるなら、馬場馬術はフィギュアスケートみたいなもんだ。それは舞踏だ。馬を躍らせるのだ。その動きの美しさを競うわけ。その際、あくまで主役は馬であり、乗り手は・・・コーチか監督みたいなものだな。
まあ、馬場馬術をやる人間に一番必要なのは、忍耐かな。だって時間がかかるんだもん。馬は言葉を話せないし、人間のようには理解できないからね。だから、馬にのる人間は、馬と人とが理解しあうためのコトバを学んでいかなければならない。そういう意味で、みんなちょっとはホースウィスパラーなのかな。そうであるべきだ。
著名なアメリカの調教師が言った。
「良い乗り手は馬の言っていることを理解する。さらに優れた乗り手は彼らの囁きさえも聞くことができる。」

馬といのはだな

2001年11月22日
かれこれ、四半世紀以上生きてきた。そのうちの半分以上を馬と関って生きてきたなあ。長い付き合いよ。
馬というのはなかなか奥の深い生き物で、私は彼らのことを100%理解しているとは言えないけど、知ってることを書いてみたいなあ。3年間、修行僧のように馬とだけ向き合った時期もあったし。そのときのことなんか、忘れないうちに書いておきたいなあ。
映画でも話題になったが、私はホース・ウィスパラーになって、幸せな馬をこの世に一頭でも増やすのが夢だったんだ。そのための才能が足りなかったし、今は複雑な人間の事情で、馬からは遠ざかってしまったが。
馬は好きだ。大好きだ。

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